☆01・20



昨日京都から戻った。

公演は大きなミスもなく無事に終えることができた。
翌日のワークショップも参加者とメンバーとが一体になって動けたと思う。

よい時間を過ごせたのは制作をしていただいた京都の方々のご尽力によるところが殆どだ。
いや、名古屋、神戸からも手伝いに参加してくださったり、高知、福岡その他の都市からわざわざ観に来てくださったりと、感激してしまう熱い思いに支えられて成り立っていた舞台だった。

本当にありがとうございました。


2泊3日の滞在ではホテルと劇場とワークショップ会場しか行かないから、見物や観光はない。
人によっては夜に飲みに出たりもしたようだが、本番前の夜は宿でお湯を飲んでいた。
本番後の打ち上げを終えてもやはり宿に戻って過ごした。
翌朝にワークショップを担当するので、緊張するわけではないけれど気を緩めてしまわないのは性格か。


でも、遠く京都までいくのだから何かないかなと考えてはいた。
京都はコーヒー・喫茶店文化が発達している。どこかいいカフェあるかな。
あ!京都なら焙煎家のオオヤミノル氏がいるぞ。
調べてみた。Factory Kafe 工船。
これがなんと劇場と同じ通りではないか。河原町通りの歩いて行ける距離にオオヤ氏の店がある!


昼過ぎに劇場に到着。
照明さんとスタッフの方に挨拶をし、衣装のアイロンがけを済ます。13時。
4時の照明合わせまで時間がある。それまではアイロンがけやもろもろの準備をめいめいにする時間。
ちょっと散歩に出ても大丈夫か訊ねたら、いいでしょとのことだったので、まっすぐ向かった。カフェ工船。
サッサと歩いて10分もかからなかったかな、到着。







入ってみた。

カウンターにどうぞ。
全然愛想はよくない。けど俺は好きだ。余計なことをしない店であることを感じられた。

座ったら水を出してくれたけどメニューを持ってくる気配はない。
隣の人が見ているメニューが空いたらそれを見ればよいから待ってよう。
オーダーをし終わったらそのお客が俺にメニューを手渡してくれた。自然なこと。
だから、店員がそれをわざわざ説明しない、指示しない。それでいい。

エチオピアの深煎りを頼んだ。
こってりとあっさりの2種類があるようだ。こってりは90ml、あっさりは180ml。
湯の量が違うのか。
もちろんこってりを頼む。
豆を挽いたとたんに物凄くいい香りが漂った。
ネルによるドリップを目の前で見ることができた。とてもゆっくり淹れていく。

来た。




盆に乗っているガラスのカップがエチオピア。
銀のは水。白いポットには一度出した豆の出がらしで落としたコーヒー。
苦さを薄めて調節したりそのまま飲んだりして楽しめるもの。

まず香りを嗅いだ。
一口飲んだ。
すげえ。
香り、味わい、複雑にいろいろな味がする。
新鮮な果物か野菜のようで強烈なパンチもある。やばい。トロピカルな色合いが見える。

こういうコーヒーを以前にも飲んだことがある。
中川ワニ氏のイヴェントだ。
仙人スパイスの胡椒の産地であるインドネシアの山奥でコーヒー豆を見つけたのだった。
それをワニさんが焙煎し淹れてくれた。
ほんの少しの試飲カップだったけど、これもまたやばいウマサだった。

そういう種類のコーヒーにまた出会ってしまった。

あの時はほんの少しだったけど、今日のは90ml一杯分ある。
なんにしろチビチビとゆっくり飲む俺にはピッタリのサイズだ。
本とか持ってないし、カウンターでやることもなく、唯々コーヒーを味わった。

アンチョビバタートーストというのも頼んだ。

カウンター内での所作、ふるまいに余計なことをしないのが好きだった。
変な愛想をしない。バターの塗り方も大胆で、不要な丁寧さは排除されている。
ほとんどぞんざいとも見られそうな様子だけどちゃんとやってくれている。

来た。




たっぷりのバターが溶けて揺れている。
ナイフフォークを扱えない俺だ。パンは手で食うぜ。
一口やったら、
「レモンを丸めて絞ってください」と言われた。
それに答える前に
「うめえ!」といったら
「よかった~」と言ってくれた。となりに座っていた人も笑った。
レモンを絞ってむしゃむしゃと食べてしまった。
おいしかった。素材もいいんだろうな。

Aにも飲ませたいなぁ、と思いながら、チビリチビリとコーヒーを飲み続けた。
あまりにも複雑な味わいのため、90mlを2時間くらいかけたいところだが、そうもしていられない。
少ない時間の中でできる限り味わい尽くそうとした。

もういちど行きたい。
あの素敵な空間で自分の音楽を聴かず、本も読まず、ぼんやりとコーヒーを飲みに行きたい。

あ、壁にはリタ・ミツコのLPが2枚飾ってあったな。効いているわ。