☆01・15 末広亭に行く



先週、母が教えてくれた。
「小三治とさん喬で池袋あるよ。」
正月の寄席はお祭りで、お祝いで、落語をみっちり聞くという感じではないからすっぽかしていた。
調べてみると二人が交代でトリをとる香盤で、小三治師が11,13,14,15日の上がりだ。

15日のヨガは朝しか予約が入っていない。
夏以来落語も聞きに行っていない。
寄席は20日まで正月だ。行ってみようかな。

池袋は昼席のトリが小三治師。
そのころに行って、そのまま夜席も見よう。
と考えたのだけど、夜のトリ権太楼師の落語はずいぶん見たし、あまり好きでもないからどうも気が乗らない。


もう少し調べてみると、この正月中席は、池袋の昼の出番の多くの芸人が夜の新宿に出るという香盤なのだ。
へぇ、それはいいな。

新宿の場合、昼のトリは市馬師。
10年前の独演会以来トリでは見ていないな。。
そのまま夜席を最後の小三治師まで見るのがいいな。
末広亭に電話してみたら、予定通りに小三治師は上がりますとのこと。

よし、新宿に行くぞ。



朝のクラスを終える。
家に戻り掃除、洗濯を取り込み、昼飯。
ソファに横たわる。15分でも寝ておこう。
猫の昼飯を出し、出発。


3時半あたりを目指すが、少し早くに新宿到着。
昼夜通しの客があるからまずは立ち見だろう。覚悟しているけど長時間立つのは避けたい。長丁場だから。

少し時間を潰そう。

というか景気づけ~。

西武新宿を降りたらすぅーっと一軒めに吸い込まれてゆき、まっすぐ卓に通される。着席するなり口が言った。

「熱燗」。


たまらねえ
真っ昼間に
きゅうっと熱燗


一杯だけで勘定ね
205円

レジでもこんな客は珍しいみたいで
オーダーを取った店員に確認していた

ワンカップより安い
といっても一軒めのは白鶴の普通酒

あ~
楽しい



もうちょい時間があるな。
家用のパンを仕入れに行こう。タカシマヤまでさくさく歩く。歩が軽い~。
Peckで固いパンを所望。デカイのを2つ買う。

さくさく歩いて末広亭へ。
てけつ。
3500円。特別興業の値段かな?


椅子席はやはり満席。桟敷がいくつか空いているとのこと。
かきわけて座るのは気が引けるし、昼席が終わったら空いたところに座るから、しばらく立ちます。
木久扇師が爆笑を取っている。談志のマネ、角栄のマネ、彦六師のマネ、と面白い。
終わるとスタッフの人がひとつ空いた椅子席を案内してくれた。
わぁ、もう座れたよ。夜までの椅子席を確保。ありがてえ。
文楽師のおもろい話が終わりヒザは交代出演でアサダ二世。
ラッキー。この人大好き。最近はネタをやらない日もある。手品師が手品をやらずに芸になるという、ありえないけどホントのはなし。すごい芸人。機会があれば見て欲しい。

で、昼のトリ、市馬師が登場する。きれいだな。
マクラも早々に「番頭さん。」スジに入った。
やった。「味噌蔵」だ。大好きなネタ。おもしろい。
納得の出来。


昼席おしまい~。
帰る人は半分もいないのではないか。
しかし池袋も末広も浅草も、昼夜入れ替えなしで一日見ていられるなんてホント楽しい遊びだよ。


池袋に行っていた母にメールをしてみる。
「小三治師はなにやった?」すぐに返信が来て「しゅうろん」
すげえなオカン、宗論なんて知ってるのかよ笑?

客はそれぞれに何か飲み食いして自由に過ごしている。
俺も小腹がすいたので、買ってきたパンをちぎって齧る。ビールでも飲みたいわ。。


夜も素晴らしい芝居だった。
正月の興業ってのは避けてきたのだけど、二の席になるとばっちり落語を聞けると知った。

喬太郎師はいつも面白いし大人気で「まんじゅうこわい」。
色物さんでは漫才のホンキートンクを初めてみた。金魚にゃんこはいつもの感じで明るく楽しい。美智美都姐さん達の奇術は微妙な間合いがおかしいのだけど字では伝えられない。最近みてないけどアサダ二世でおなじみの「パン時計」をこの二人ので見られた。
小さん師は「鮑のし」以前の印象と違って悪くない。
一朝師はさすがのうまさ。安定していていつも納得。「蛙茶番」がきわどくてメチャ面白い。
小満ん師「宮戸川」。わお。


中入り~。


ヒザ。正楽さんの紙切り!
相変わらずかっこいい。憧れの色物さん。一度京王線でみかけた。かっちいなぁと離れた所から見ていたら趣味のクロスワードをやっていた笑。素敵だ。
あっという間に「羽子板をする少女」を切った。見事。
次、リクエスト。
あちこちから声。「初天神!」「犬の保育園!」ってなんだよそれ笑。
あ~ぁ、しまった。初天神は言わないで欲しかった~。
「初天神」というのは古典のネタで、おやじと子供が神社にお参りに行く話。
俺はこの噺があまり好きじゃないのだ。だけど小三治師は得意で高座によくかけるのだよ。
正月でもあるし、今日もまた初天神だったらちょっと残念だなぁ、と朝から気にかけていたのだ。
ヒザのところで初天神とかいわないで。やばいな~。

正楽さんは相変わらず見事で、さすが。かっこいい。


さぁ、
みんな待ちに待った二上がりかっこが鳴りはじめた。
出囃子もたっぷりで、ゆっくりの小三治師匠が出てくると方々から声がかかる。
「待ってました」

いつも通りゆっくりのマクラをかみしめながら楽しむ小三治落語、寄席の時間。幸せだ。
どんな話をしてくれても大丈夫。かならず楽しめる。

しかし、だ。
神社とか寺とか、初詣に行きましたか?とか、自分の子供を初めてお宮参りにつれて行ったときの話とか、とか、
初天神に一直線なフリなのですよ。避けたい流れだ、助けてくれ。この線、ずらしてくれ~。

すっとスジに入った。

「番頭さん。」
?番頭さん~?
やった。大丈夫だ。初天神に番頭は絶対出ない笑。

「宗論」だ。
小三治師のを寄席で初めて聞いた。
わぁ。おもろいなぁ。
昼も夜も宗論とは。帰ったらオカンに昼席の様子も聞いてみよう。


ぞんぶんに楽しませてくれた。本当にいつもいつも満足させてくれる。

満場の客はみんな幸せになって追い出し太鼓を背に聞いた。


日にちを決めて、行くぞ~と決めて行く時よりも、今日みたいなノリで来ちゃった時にメチャいい芝居に当たる。

こういうのがあるから寄席の遊びはやめられない。