先日、チャンドラーを借りたけど読めなくて2ページでやめて返却したと書いた。
ついでに村上春樹も苦手だみたいな言い方をした。
その時に思い出した。Kさんは村上大好きだったなぁ、と。
その晩に即Kさんからラインが来た。「質問があります。エッセイなんか読みますか?お貸ししたいものがあります」「なになに?」「内緒です。持っていきます」と。
う~ん、こりゃあ村上のエッセイが来そうだなぁ。まずいな、ああ書いて尚オススメされて、やっぱりつまらなかったではあまりにも不毛だし、なんかギクシャクしたらやだなぁ。
と心配な俺のところにKさんが持ってきたのは、やはり村上のエッセイ。
安西水丸と週刊アサヒに連載していたものをまとめた文庫本。
「小説が読みにくかったのはわかります。このエッセイはばかばかしいことばかり書いてあるので読んでみてください」とのこと。
翌日から読み始めた。雑誌に書いていた短めの文章がたくさん入っている。
これがとても面白かった。
面白い。村上氏の力の抜けた気持ちがすなおに書かれている。
モノの感じ方がとてもいい。素直に感じた自分をそのまま文章にしている。
変に創作しないのがすごくいい。足さない、押し出さない。その加減が気持ちいい。上手い。
この面白さは独特の味がする。その味わいは、俺が落語を好む感覚に近いことに気が付いた。好感しかない。
そして、Kさんすげえな、と思った。
俺が村上を食わず嫌いしていることを知っていて、これを読めばその頑固オヤジのこだわりは崩せると看破した。更にきっと好きだろうと読んで小説じゃなくてエッセイを選んだ。
嫌いだと言っているものを読めというのだから、それは勇気ある行為だと思う。
数編を読んですぐにラインした。
「おもろいです~」「でしょう?!」「ニヤニヤしてます」「やっぱり、作戦成功」「声を出して笑っています」
村上春樹という人はこういう文章を書く人だったのか。
というよりもこういう人だったのかと知れたことが嬉しい。数々のベストセラー長編も読んでみようと思った。
俺は子供の頃はイカが嫌いだったが、大人になり大好物に変わった。ヤリイカのたまらない美味しさを知った。
そういう喜びがある。