先週はこんなできごとがあった。
instagramでつながっている方からパンが届いたのだ。
この方はエジプトのミイラの中から見つかった古代の小麦、カムット小麦を使ってパンを焼く方だ。
インスタではジャムおじさんという名前を使い、焼いたパンについての論考や、それに関連する小さな物語を作って投稿している。心象を詩的な文章に綴るのだが、人のよさとやさしさが感じられてフォローするようになった。
少し前にこんな投稿があった。
副題 「こてんぱん」
新年に罰金ガム宮殿では、世界中の職人が、珍しいものや美味しいものを競って献上していた。勲章をもらうことができれば、その店は生涯の成功を約束されるからだ。
ジャムおじさんは、ひそかなる夢で、いつか女王さまに自分の自慢のパンを一口でも食べて欲しいと願っていて、毎週放映される子どもたちが楽しみにしているテレビを休んで、イギリスに一週間行くことにしました。
そうしてパン屋さんがしまった後に、パン屋さんの工房を借りて、せっせと作りました。
いよいよ献上の日が訪れて、ジャムおじさんのパンが並べられているのを探すも、どこにもありません。
もしかしたら、珍しい顔の形のパンを見て、誰かが嫉妬して食べてしまったのかもしれません。ジャムおじさんはひとつぶ涙をこぼして帰ろうとした時、出発時に息子に渡されたパンがポッケにあることを思い出して、えいっと、それを自分の名札のかかるお皿の上に置きました。
試食の時が訪れました。
フランスやドイツ、トルコやギリシャのそうそうたるパン屋さんたちの中で一番貧相なパンが、ジャムおじさんのパンでした。
女王さまの使いのものは、そのパンは女王さまに相応しくないと判断して素通りしたのですが、女王さまはどんなパンであれ、一口は必ず試食する人徳の高いお方でした。
すると「おいしー」と女王さまらしからぬ標準弁で感嘆したのです。
そうして授与式の際に、ジャムおじさんは悩んでいました。
あのパンはパン屋ではない息子が自分に作ったパンで、パン職人の栄誉をもらう訳にはいかないと正直に言いました。
すると世界中のパン職人は、パン職人ではない素人のパンに負けたことに怒りを感じ、ジャムおじさんはこてんぱんに叩かれました。
その息子の焼いたパンは、古代エジプトの石棺から見つかった麦の種で作られていて、製法はヨーロッパの古典的伝統製法でした。
ジャムおじさんがジャムおばさんに送った特別なパンのレシピを秘密のノートを見て練習していたのです。
そうして、このパンの名前は「こてんぱんの古典パン」と名付けられ栄誉ある勲章を授与。パリではパン獅子像を授与。やがてハリウッドで映画化された暁には、全米が涙を流したというおきまりのキャプションを付けられたのでした。
ちゃんちゃん🎶
ーおしまいー
よくここまで読まれました。
ありがとうございます🙇😊
私は珍しくコメントをしてみた。
こてんぱんの古典パン 味わってみたいですね~。
おぉぉ 嬉しいですね。特別献上リストに入れて、年内にお送りできたらと存じます。
け、け、献上リスト~!!どうなるのだろう~。
忘れなければ、お送りさせていただきます。
中には具を入れられますか?胡桃とクランベリーとカランツがありますよ。全部でも2種でも1種でも大丈夫です。ご検討くださいませ。
要望はありません。こてんぱんの古典パンオリジナルを食べられたら一番幸せです。
ありがとうございます。架空のお話なので、お好みがあればお教えくださいませ。
なければ、カムットの割合を30%から50%にあげるとか、シンプルに胡桃だけ入れるとか、ご希望がありましたらお教えくださいませ。😊
頑張って作ります!
ではお言葉に甘えて具3種でお願いいたします。
はい!
わー、本当に送ってくれる感じになってしまった。すごい。
Aもこの方のファンなのだ。この話を聞いてビックリしていた。
数日後。。。
こんばんは😊 明日、焼きあがる予定です。ご住所はプロフィール欄に記載の箇所でオッケーでしょうか?お教えくださいませ。
まぁ!なんて嬉しいことで!そうです、プロフィールの住所です。
で、うまそうなパンの焼きあがりの写真が投稿されていた。このパンが届くのか。
すると、
こんにちは。
今日焼いたのは満足する出来ではないので、改めてチャレンジさせてください。数日以内にはお届けできます。よろしくお願いします。
苦労をおかけしてしまいます 。
とんでもないです。わずかな気の緩みが出てしまい、面目がないためです。今最終発酵を開始しました。
これはすごい。
本当のものしか渡さないのだ。本当の仕事しかしないのだ。。。
こんにちは😃無事に焼けましたので、明日到着でお送りします。ほぼこの生地のレシピです。中に具を入れすぎていたので微調整しました。お口に合いましたら幸いです。では!
で、翌日届いた。
うまい。
酸味のある生地がねっちりと味わい深い。
長い時間をかけてここまでたどり着いた道のりを感じ、胸に来るものがある。
深くあたたかいパンを味わう幸せな午後だった。
最近、ものの値段とか、お金ということについて考えることがある。
物々交換ということについて、うちに来る人達と話したりしていた。
例えばヨガのレッスンはお金ではなくて食材と交換するとかどうだろう?みたいな話を。
今回このパンを送ってもらえることになり、玄人のすごいパンが来るのはわかっていたが、お金でお返しをすることは考えられなかった。そういうものではないから。
だからといって只でもらうわけにもいかない。
パンを焼いてくれたのだから俺はコーヒー豆を焼こう。
で、好みがあるかなどを訪ねてみたら、見返りを求めておらず、食べて喜んでもらえたらそれが幸せだ、とのこと。
本当にそう思っているのだと思う。だから、感謝と敬意を伝え、いただいたままにすることにした。
わかってくれたことをまた喜んでいらした。
なんか、素の自分のままで分かり合える友達が出来たような気持ちになった。