☆1・15



一年で一番寒いこの時期になると何故かバッハの受難曲を聴く。
マタイ、ヨハネをどれだけの演奏家で聴いてきたのだろう。
毎年この時期にこの話を書いている気がする。
昔から読んでくれている方は俺がマタイ、ヨハネ好きなのをご存じかもしれない。
昨日はリヒターの名盤を聴いた。3時間半くらいの作品なので一気に通しては聴けない。歩いて移動するときや、家で時間が空いた時を使って聴いた。
数多あるレコード・CD録音、演奏史上最高峰に君臨し続けているであろう名盤だ。
俺はこのリヒター盤を聴いたのは舞踏家Oさんの公演でだった。その方とは一緒に仕事をすることもありお互いバッハが好きでよく話した。ムサビでは二人でベートーヴェンの第九を通しで踊ったりもしたことを思い出す。
そのOさんの公演は、このリヒター指揮のマタイ受難曲だけで構成されていた。なんて素敵なストイックな舞台だろう。Oさん以外の出演はお弟子さんが二人。ずっと3人が出ている。そしてあまりにも深い静けさが保たれた舞台だった。
踊る体の内的な静けさと、音楽の静謐さが重なり素晴らしい作品であった。
俺のそれまでのマタイで一番の愛好盤はメンゲルベルクのものだったけど、このCDも聴いてみたいと思ったものだ。あとからOさんにお会いすることがあり、だれの録音だったかを聴いたらリヒターだと教えてくれた。

いまの俺がそのリヒター盤を聴いてみると、いいにはいいし素晴らしい音楽が生み出されたのは感じられる。
だが、最高の一枚ではなかった。ソプラノがちょっときついのだ。

ではどの盤がベストなのかというとそれはまたの機会にして、興味があればいろいろ聴いて楽しんでみてください。いいのがあれば教えてください。

30歳の頃か、ヨガを始めた時期とマタイを聴きまくっていた時期が重なる。
吉祥寺のY先生のレッスンには週3回くらい通っていた。帰りはサンロードの奥へ向かい、Lindeのドイツパンを買い、エノデカで重めの赤ワインを購めて帰り、マタイを聴きながらパンとワインの日々だった。
メチャメチャ体を鍛え、勝手に一人で厳粛な聖体拝領をやっていたようなものか。。

俺はキリスト教徒ではない。むしろ宗教感情の低い人間だけど、このキリスト・イエスの生涯を描いた大曲が大好きで聴き続けている。
毎年復活祭の頃まではマタイとヨハネ受難曲を聴きながら口笛で歌う時間が多くなる。



久しぶりにクープを入れた
焼き上がりを眺めたら
十字架に見えるではないか